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小説の更新記録 |
9月29日・黄笠・小説でも小話でもない、ただの妄想をつらつらと。
9月24日・黄笠2「つめたいて」
9月24日・黄笠1「あたためて」
9月20日・斎左之9「くちづけの意味」
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特技は何でもBL変換すること。
人見知りオッサンであります~
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斎藤一×原田左之助
「くちづけの意味」 中文
壬生さんが設定した(? 生み出した?)この斎左之が大好きで、書かせてもらってます。
もしかしたら…壬生さんの設定とかけ離れたモノになっているのかも…。
年下鬼畜攻め×年上お馬鹿受け
風邪をひいた左之っちを、茶化す総司といつもの斎藤さん。
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「あ~!! なんか雪に負けたみてぇでムカつくぜッ!」
鼻声の原田左之助はそう声を上げて、手に持っていた椀を畳の上に置いたと同時に体を倒した。
「左之さん、さっきからそればっかり……。でもまぁ、元気になってよかったけど」
粥の入っていた椀に目を落とした沖田総司は、一粒も残っていないそれを見て言葉に笑みを乗せた。昨日は薬を飲ませるために無理やり粥を一口含ませたことを思い返せば、安堵の色に変わるのも当然だ。
一昨日、目を覚ますと外は降り積もった雪で白く彩られていて、原田は非番をいいことに一日中寒さも忘れて近くの壬生寺で子供たちとはしゃいでいた。――その結果、二日も寝込む破目となったのだ。
掛け布を鼻の頭まで上げて目を瞑る原田のおでこにそっと手を置いた沖田は、感覚に刺激されて原田が目を開けたのを確認してから前髪を上げるように頭を撫でた。
「ホント、良かったですよね……」
穏やかな声音に、原田は訝しむ。何故かと問われれば、長年の勘としか言いようがないのだが……。間をとる沖田のやさしさに包まれた笑顔を見れば見るほど、原田には『早く何かを言いたげなのに勿体振る』厭らしさを感じてしかたがない。
「――なにがだよ」
その言葉を待ってましたとばかりに、沖田はニンマリと更に笑みを深くした。
「これで証明されたじゃないですかぁ! 左之さんは『馬鹿じゃない』って」
「……は?」
「だって、馬鹿は風邪ひかないって言うじゃないですか~!」
「おォーまァーえェーなッ!!!」
怒りに飛び起きた原田は勢いのまま、ケラケラ笑う沖田の両肩をわしづかみして押し倒した。
「痛いですよぉ! もぉ左之さんの馬鹿力ぁ!」
「うっせえよ! このままおまえに風邪うつしてやるッ」
「キャァー!! 誰か助けてぇー!」
声の限りに叫ぶ沖田だったが、その顔には焦りの色はなく、じゃれ合いを楽しんでいる。
「どうしたんですか? 物騒な声をあげて」
「あ、斎藤さん! いいところに」
薬と湯飲みをお盆に乗せ部屋の襖を開けた斎藤一は、布団の上で重なり合うふたりを見た。長い髪を乱して仰向けになって抵抗している沖田に覆いかぶさり、両腕を押さえつけている原田の姿。
いつものように、じゃれ合っていると判ってはいるが、あまり胸の好く光景ではない。
「原田さん、病人はおとなしく布団で寝てるものですよ。さぁ、沖田さんもふざけてないで」
「はぁ~い」
親の言いつけを素直にきく子供よろしく返事をした沖田は、今の今までジタバタもがいてたとは思えないほど、するりと原田の手から片腕を引き抜いた。その手は休むことなく原田の肩に添えられ、次の瞬間――体勢は逆転していた。
「風邪うつると嫌なんで、私は今日も土方さんの部屋へ避難しまーす」
誰に報告するともなく宣言し開いている襖の前まで来ると、沖田はおもむろに立ち止まり、首を左右に、そして一回転させて呟いた。
「あ~あ、左之さんの相手するのってホントに疲れる……」
「なッ! せっかく礼言ってやろうと思ってたのにッ。――ゴホッゴホ」
閉められた襖の内側へと閉じ込められた言葉を、原田の声が蹴散らした。昨日にはなかったいつもの光景に、斎藤は安堵の息を吐いたものの、咳き込みだした原田のわきへと腰をおろして嗜めた。
「治りだしたからといって、気を緩めないでくださいよ。今回もちゃんと、薬飲んでください」
横になっていた原田の上体を支え起こした斎藤は、断続的につづく咳こむ背中をやさしくさすった。
「ちがッ、これは風邪の所為じゃなくって、気管にだな――」
「そうだとしても、風邪をひいているのに違いはないでしょ? 言い逃れしようとせず、きっちり飲んでください」
「……わかったよ。わかった、ちゃんと飲んどくからおまえも出ていけよ」
湯飲みと薬の粉末が入った小さな紙の包みを自ら掴んだ原田は、乾いて痛む喉を白湯で潤した。
「…………」
飲んでいる間にも動こうとしない斎藤は、唯一眉を少し上げただけだった。
胡散臭げに向けられる視線が真意を見透かしているようで、原田は無意識に身じろぐ。
「な、なんだよ」
「私を出て行かせて、なにをするんです? まさか薬を飲まずに捨てようだなんて、子供じみた事、考えてないですよね?」
「ゔッ」
直球で図星を射抜かれた原田は一瞬言葉を詰まらせたが、次には小さい声音ながらも反論をつづけた。
「薬なんて飲まなくっても、寝りゃあ明日にはもう治ってるって」
「――そんなに、私からの口移しで薬を飲みたいんですか? 甘えてるなら早くそう言ってくださいよ」
湯飲みと薬を持つ原田の両の手を斎藤の手が包む。言葉を実行にうつす斎藤の顔は、なんとも楽しげで原田はうろたえた。
「わ、わ! 放せ、バカヤロォ。飲むよ、自分で飲むから放せ!」
「最初からそうしてくださいよ。飲まないで明日まだ治っていなかったら、隊士のみなさんが困るんですよ? そんなことになったら原田さんだっていい気分じゃないでしょ?」
どこか安堵の表情にも似た柔和な視線を向けられ、原田は少し頬を引き攣らせた。
(……このやろぉ)
けれど、斎藤の言っていることは正しいので、意を決して小さな包み紙を口元で傾け、すぐさま白湯を一気に飲み干した。
「ぅエッ! この、あとに残る苦いのが嫌なんだよなー」
「偉いですよ、原田さん」
独特な苦味が気持ちを苛立たせるのに、それに圧し掛かってくる斎藤の言い様が気に入らない。
「何が『偉い』だ! 人を子供みたいに……バカにすんじゃねぇよ!」
怒りは口をついて出ると増大して、言わなくてもいいような小さな火種さえも燃え広がせてしまう。
「さっきだって、口移しで飲ませてやるとか言いながら、本当にしなくて良かったって、ホッとしてんだろォ! 風邪ひくのがそんなに偉いのかよ」
言い終えて閉じられた唇。イライラを吐き出せて少しはスッキリしたのか、口の中で溜まった空気で膨らんだ頬が見る見るおさまってゆく。
その名残なのか、唇を少し尖らせ、視線を此方へと向けずに手の中の小さな紙を見据える様は……。
拗ねている子供――そのものだ。
「―――――」
ムラムラと湧き上がる衝動をとりあえず落ち着かせようと、斎藤は目を閉じて深呼吸をした。取り乱してはいけない、相手はまだ風邪が治っていないのだから……。
そんな思いも知らず、原田は図らずも斎藤の理性にそっと触れるような仕草をとってしまった。
「……なんだよ」
チラリと瞳だけを斎藤へと向けたのは、深呼吸をした不審さからだったのだが――上目遣いで乞い願う表情に見えたのは、斎藤の邪な気持ちの所為。
「薬飲んだんだから、文句ねぇだ――ぅムグ……」
言葉の語尾を斎藤の唇に奪われた原田は、力強い両腕に包まれ身動きがとれない。唯一動かせる首を右に左にとしてみたが、なぜか余計に斎藤と合わさって……逆効果だった。
「ふぅ…ンんぁ……さいとッ、や…やめ――ン!」
拒む声を見計らって開く唇に、斎藤の舌が差し込まれた。だが、口の中をまさぐる動きに翻弄されながら、原田ははっきりと、その様がいつもと違うと感じていた。
「――原田さん、落ち着いて。もう少し……」
真意を確かめたがっている原田の戸惑う瞳に、やさしく視線をおくった斎藤は、軽い口付けを挟みながら言葉を落とした。
「……落ち着け…ったって……」
呼吸を乱され、愚痴も強制的に短くされた原田は、後に続けるはずだった言葉をジタバタと体を使って叫んだ。
(おまえがこんなことするから落ち着けねぇんだろうが!)
暴れる原田を意に介さず、斎藤からの口付けは難なく続く。器用に動き回る舌先は、何度も原田の舌の腹を刺激した。
「ンっ――ぅんん…………!」
荒くなる息遣いは斎藤をいつものように高揚させるが、頭の片隅にあった『病床人』だということが欲望を思いとどまらせ、ゆっくり唇をはなした。
「も……、なんなんだよ、いったい……」
息も切れ切れに訴える。睨みつける気力さえ失っていた原田の潤んだ瞳が、いとも容易く斎藤の心を揺さぶったが、ここは珍しく理性が勝った。
「もう、苦味は消えたでしょ?」
「……………………はぁ?」
「薬の苦味が残るのが嫌だと言ってたので」
「で………あんなことしたって?」
「ええ」
当たり前のことをした――そんな表情の斎藤。ふつふつと湧き上がってくる怒りに、原田の顔が引き攣っている。
「おーまーえーなぁ!! んなことやる必要ねぇだろ!? 水持って来いよ、水!!!」
「では、次からそうします」
悪びれる素振りもなく笑顔まで見せた斎藤に、原田は眩暈を覚えて突っ伏した。
怒るのにも体力がいるようだ。
「治ったら、……憶えてろよ!」
「はい。ちゃんと憶えておきます。今度は、今日の分を上乗せして……気持ちよくしてさしあげますよ。存分に味わってください」
背中を撫でながら耳元で囁いてくる斎藤に、原田は力を振り絞って、掛け布に包まった。
=終=