カテゴリー |
小説の更新記録 |
9月29日・黄笠・小説でも小話でもない、ただの妄想をつらつらと。
9月24日・黄笠2「つめたいて」
9月24日・黄笠1「あたためて」
9月20日・斎左之9「くちづけの意味」
プロフィール |
特技は何でもBL変換すること。
人見知りオッサンであります~
================
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
黄瀬×笠松
「つめたいて」
先に書いた「あたためて」となんかタイトル似てますが、
続きとかではありません。
なんやかんやと世話焼きな笠松に甘える黄瀬
■■■■■■■■■■■■■■■■■■
放課後。
黄瀬はようやく掃除当番の任を果たし終え、部室へとついた。少し長引いた所為で通常練習の時間が過ぎてしまった部室には誰もいないと思っていたのに、そこには笠松の姿があった。
「あれ? センパイ! もう始まってんじゃないんスか?」
挨拶も忘れて、弾んだ声を響かせた。
「おぉ、黄瀬か。もうとっくに始まってんよ」
「じゃあ、オレを待っててくれたんスか?」
「んなわけねぇだろ。タオル忘れたから取りに来ただけだ」
「なぁんだ……」
プクリと頬を膨らませ、自分のロッカーを開けた黄瀬は、着替えに取り掛かる手を震わせている。
「先、行ってんぞ。お前も早く着替えろよ」
「……センパイ……」
いつになくテンションの低い声に、笠松は足を止めて黄瀬に近づく。
「どうした?」
「センパぁイ!! 手が冷たくて動かないっスぅ!!」
「ぁ?」
服を脱ごうとボタンに手をかけたが、かじかんだせいで、うまく動かない。
「脱がせてくださいよォー」
「ぁあ? なに言ってんだ、ふざけんな、ボケが!」
「でも、ホントに手がぁ……」
冗談ではないのだと知ってもらうために、黄瀬は指先を笠松の頬に当てた。
「ッめて!! なにやったらそんなに何だよ!」
「今日は当番で外掃除だったんスよ。で、水も使ったから……」
黄瀬は答えながら冷静を保つのに必死だった。
冷たい両手が、温かな笠松の手に包まれている。
「……センパイ……」
「こんなに冷てぇのに、『はぁはぁ』もしなかったのか?」
「『はぁはぁ』……っスか」
疑問を向けると、笠松は顔を冷たい手に近づけた。
「はぁー、はぁー」
笠松の手の温もりも奪ってしまっても、まだ冷たい黄瀬の手に、温かな空気がまとわりつく。
「はぁー、はぁー」
温かな息を吹き掛けては、手をやさしく揉んでを数回繰り返して、ようやく黄瀬の手は体温をとり戻した。
「……センパイ」
「ん?」
「ジンジンするッス…………」
「血行が良くなってきた証拠だ。どうだ? 動くか?」
―― ヤバイ
黄瀬は、胸の底からむくりと目覚めだした邪な感情に気づいて、自らに警鐘を鳴らす。
けれど、頭ではわかっていることでも、体が勝手に動き出す。
「なんだよ」
もう冷たくない手が、笠松の両頬に添えられた。
身長の差がそうさせるのだが、上向かせた笠松の顔は怪訝に曇っている。
「お礼のキスをしようと思って」
「な――」
近づく顔に手のひらで思い切り押し返した笠松は、離れた瞬間に蹴りを食らわした。
「ィデデ!! 痛いッスよ~センパイぃー」
「商売道具を最小限にしてやったんだ、ありがたいと思え!!」
タオルを肩に引っ掛けた笠松は、捨て台詞を残して部室を出て行った。
「…………」
一人になった黄瀬は、まだ居座り続ける胸の中の澱を吐き出すように、深い溜息をついた。
(ヤバイ、ヤバイ……)
笠松に温められた両手を握り合わせ、黄瀬はそっと、唇をあてた。
=終=
■■■■■■■■■■■■■■■■■■