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小説の更新記録 |
9月29日・黄笠・小説でも小話でもない、ただの妄想をつらつらと。
9月24日・黄笠2「つめたいて」
9月24日・黄笠1「あたためて」
9月20日・斎左之9「くちづけの意味」
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特技は何でもBL変換すること。
人見知りオッサンであります~
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新選組
沖田総司と斎藤一
「胸裏想人」
斎藤をからかって遊ぶ総司が好きなんです。
総司の言葉に、自分の気持ちを思い知らされた斎藤の話。
■■■■■■■■■
「なんですか? 斎藤さん。私の顔に何かついてます?」
「あ…、いえ……済みません」
沖田総司に暇をもてあましていた姿を見つけられてしまった斎藤一は、沖田の強引な誘いに付き合うことになってしまった。
「むぅ~!! 人の顔をじっと見ておいて謝るだなんて、とっても失礼ですよ! 斎藤さん! さぁ白状なさい!」
「本当に、なんでもないんです……」
「ホントに強情な人ですねぇ。言わないんだったら、このお饅頭、斎藤さんが抜け駆けして食べてたって、近藤さんに言いつけますよぉ!」
そう言いながら沖田は手に持っている頼まれて買ってきた包みを開けると、 一つ摘まんで自分の口に運んだ。 大きな饅頭に小さな歯形の窪みを作って満面の笑みを向ける沖田の顔は――美味しさの為のものなのか、意地悪い言葉の継続を意味しているのか……判断しかねるものだった。
けれど、 やわらかい沖田の笑顔に斎藤はつられてほほえんだ。饅頭を余分に買っていたのも知っていたし、 何より、それを承知している斎藤にそんな事を言ってくる茶目っ気溢れる沖田の言葉は、話しかけられる一瞬前まであった…胸の中の重苦しい気持ちを溶かしてくれた。
「あっ、 いま笑いましたねぇ!! もぉ~、絶対斎藤さんの所為にしますからね!」
プックリ膨れた頬を見せつけるように覗き込んで歩く器用な沖田に、斎藤は少し目線を合わせただけで直ぐ前を向いたが、それは執拗に顔を見つめ続けてくる。
「……なんですか?」
沖田は仕返しのつもりなのか、斎藤の前に回りこみ立ち止まって尚見つめる視線を外さない。 迂回して立ち行く事も出来ず、 斎藤は沖田の次の行動を待った。
「やっぱり、つまらないです」
「え??」
斎藤は驚きの声を正直に漏らした。 無表情だの、 恐いだのと言われたことは多々あったが……沖田の言葉は初めてだった。
「だって斎藤さんの顔、いつも苦しそうなんだもの。――まるで、誰かを殺しているみたい……」
斎藤の胸が、意味も判らずチクリと痛みに痺れた。
「憎しみのものじゃなく、愛しい人をその手で殺しているみたいに…辛い……痛い顔をしています」
真っ直ぐ見つめられる黒い瞳はどこまでも穏やかに――避けようとする斎藤を捕らえ続け、温かい掌は胸の痛みを和らげるためでなく――知らしめるための強い意志のように、当てられた。
「この胸の中で、誰を殺しているんですか?」
言葉が出ない。表情も固まってしまって、顔に出てこない。
ただただ、鼻と目頭が熱くなる。
「恋をしている人が、そんな顔してちゃ駄目ですよ」
斎藤の胸から置いていた手を軽く押し離し、沖田は前を向いて歩き出した。数歩先に進んでもついて来る気配のない斎藤に、振り返った沖田は引き返し、満面の笑みを眼前におしつけ
「斎藤さん。恋する者の顔っていうのは、人の視線を惹いてしまうものなんですよ。私みたいにね」
斎藤の口に無理やり、沖田の 食べさし饅頭 を詰め込んだ。
「んムッ……!」
むせる斎藤を置いて走り去る沖田は、屯所前でかち合った土方歳三と原田左之助に向かって手を振り呼び止める。
「土方さぁ~ん、左之さぁ~ん! 見てくださいよ、斎藤さんッたら頼まれ物のお饅頭抜け駆けして食べちゃったんですよォ!!」
二人が沖田の指差す方を見ると、大きすぎて口から零れる程の饅頭を銜えている斎藤がこちらへ歩いて来ていた。
「どうせお前が無理やり食わしたんだろ?」
「酷いな、土方さん。私のこと信用しないんだ」
「アハハっ! 似合わねぇ!!」
沖田の言い成りになっている斎藤の姿が余程面白かったのか、原田は腹を抱えて笑い出した。
『この胸の中で、誰を殺しているんですか?』
私は、胸の中で――この人を殺しています。
胸の中に居るこの人を『存在自体ない者』として一生懸命消してきた……斎藤の甘い考えに、沖田は『殺す』という表現をして、《 実在の人物 》 と 《 斎藤の胸の中に居る人 》を、いとも簡単に繋げてしまった。
――私は、原田さんを殺していました。
言葉を過去にして、
――私は、……原田さんが好きです。
想いを現在に。
=終=